水鏡 - 第09代 開化天皇

 次の御門、開化天皇と申しき。孝元天皇の第二の御子。御母、皇太后宮鬱色迷命なり。孝元天皇の御世、二十二年丁未正月に、東宮に立ち給ふ。御年十六。癸未の年十一月十二日に、位に即き給ふ。御年五十一。世を知り給ふ事、六十年。この御世のほどとぞ覚え侍る。南天竺に龍猛菩薩と申す僧いますなりと承りし。真言を初めて弘め給ひしことはこの菩薩なり。又、祗園精舎は二度まで焼けしを、旃育迦王の造り給へりけるを、百年と申ししに、盗人焼き侍りにけり。何処も何処も心憂きは人の心なり。その後十三年ありて、六師迦王、又造り給へると承りしは、この御時、位に即かせ給ひて十年など申ししほどゝぞ覚え侍る。